日  時 2007.10.28(日) 13:00〜15:00
場  所 羽曳野市島泉 吉村家住宅
参加人数 15名
テ ー マ 『質素の中に、暮らしの質の高さを学ぶ…』
講  師 吉村 尭氏 全国重文民家の集い代表幹事



主屋
客室
吉村氏からの説明
記念撮影
  今回は重要文化財に指定されている「吉村家住宅」を訪問しました。大阪府羽曳野市島泉に位置し、住宅として、元和の役(1615年)の直後に創建され、桃山時代の書院造りの建築様式を一部に留める代表的な大庄屋の建物です。昭和12年に民家として最初の国宝に指定され、昭和25年には重要文化財に再指定されています。敷地は約5800平米(約1757坪)、参加者は総茅葺入母屋造の長屋門のくぐり戸を通り少し緊張しながら、門内に入りました。青空とのコントラストで茅葺と瓦葺の組み合わせで構成された主屋の屋根がとても素敵です。視線を落とすと軒下の鳥居形大戸口、出格子・柱・連子窓と卵の殻色の土壁との調和が美しさを醸し出しています。ワクワクしながら邸内に入りました。
  ここに暮らしておられる吉村 堯 氏に詳しく建物の説明をして頂けることになり、お話を伺いました。「うちにわ」と呼ばれる30坪の広々とした土間には「かまや」(かまど)があり、板の間広敷(ひろしき)から座敷に上がると黒光りした柱・梁が良質の風合いで心が落ち着きます。居室部は田の字型四間間取りから発展した六間間取りの構造で客室に繋がっています。
  客室は数奇屋風の書院造りで次の間と上段の間では匠のこだわりや入念さが異なり、欄間の透かし彫り、襖の引き手の変化や長押の13箇所ある釘隠し金具が全て違っていて非常に興味深い意匠となっています。この客室から望む北側が本来居室部の裏前栽なのが表前栽となり、書院窓から望む陰影のある庭となっていて、この書院窓からの景色は趣き深い味わいがあり来客を飽きさせない空間となっていました。
  吉村氏から「皆さん、座ってお話しましょう。和室はやはり座った位置で見ると味わいが違いますから…。」参加者が思い思いに畳に座りました。次の間から床の間のある奥座敷に視線を移すと表前栽となっている広縁の方向からの明るさを天井桟が受けて奥行き間と高さを感じて、とても落ち着いた空間を感じることが出来ました。
  奥座敷の欄間の透かし彫りも冴えて見え、表前栽側の欄間は唐草に剣菱の透かし彫りがさらにくっきりと浮き上り、当時の上質の意匠には感激した次第です。
  最後に吉村氏から重文指定になった時のご苦労や思い出を伺いましたが、歴史的価値という一般的な見方だけではなく、当時の素晴らしい造形を守ることの誇りを感じて胸が熱くなりました。今回、見学できなかった方も年に一度の公開をして頂いているので機会があればご覧になられることをお勧めします。
  少し陽が傾き、陰影を深めた茅葺きの見事さを再確認しながらセミナーを終えました。
  吉村様、有難うございました。
文/高藤正道



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