日   時 2016.3.26(土) 9:45〜15:00
場   所 神戸女学院、関西学院大学
参 加 人 数 18名
案 内 人 鈴木 重三 氏
暮らし方研究会会員、関西学院大学S56年卒
テ ー マ 『昭和モダニズム建築の雄、
ヴォーリズ設計の学舎を探訪…』



第2会場の関西学院大学上ヶ原キャンパス
関西学院大学博物館
神戸女学院正門
記念撮影
  今回は、ウイリアム・メレル・ヴォーリズ(1880‐1964)の設計による、日本有数の美しさを誇る神戸女学院と関西学院大学のキャンパスを訪ねました。同氏は、日本中に1,500以上に及ぶ建築物の設計だけでなく、教育・医療・音楽や詩作、国際交流など幅広い分野で多くの実績を残しました。1919年(大正8年)に神戸女学院大学出身の一柳満喜子嬢と結婚、その後日本に帰化して1941年(昭和16年)以降は“一柳米来留守(ひとつやなぎ めれる)”と名乗りました。
  実は、神戸女学院の見学は説明を受けながらの1時間ほどのツアーとなるため、やむなく二班に分かれての見学となりました。
  私を含む8名の一班は卒業生の鈴木さんのご案内で、第2会場の関西学院大学からキャンパスを巡りました。キャンパスは美しい建物で溢れており、広々として伸びやかで、このような環境で学べることが大変羨ましく思えました。
  上ヶ原キャンパス(1929年・昭和4年築)は、ウイリアム・メレル・ヴォーリズが神戸女学院と同じく設計とキャンパスの構成を手がけました(共に施工は竹中工務店が担当)。正門を入ってすぐの緩やかな斜面に大きな芝生の広場を設け、その先に甲山(かぶとやま)を借景として時計台を配置、 それを取り巻くようにスパニッシュ・ミッション・スタイルの白亜の校舎が配置されています。現在でも、このキャンパスの風景が関西学院大学の象徴として愛され続けている訳なのです。
  関西学院大学博物館(時計台2階展示室)では、今日まで開催されていた「関西学院のあゆみ 新天地・上ケ原に馳せた夢・特集陳列 図面にみるヴォーリズの学舎」の展示をじっくりと閲覧させていただきました。
  交代して次を見学するため、一班と関西学院学生会館で合流し少し早目の昼食。食後、約25分かけて徒歩で神戸女学院に到着。午後一時から、現役の学生さんの案内で神戸女学院を見学させていただきました。
  神戸女学院岡田山キャンパス(1933年・昭和8年築)は、スパニッシュ・ミッション・スタイルの校舎群が立ち並び、アラベスク模様の装飾や建物下半分に茶色系のスクラッチタイルを配するなど“美しい心を育むための品格ある建築”を目指したとされています。神戸女学院はヴォーリズの奥様の母校でもあり、ヴォーリズの最高傑作の一つと評されています。2014年にはヴォーリズ建築における日本初の重要文化財に指定されました。総務館・講堂・ソールチャペル、文学館、理学館、図書館、音楽館、社交館、体育館、渡り廊下、パーゴラ等、何れも素晴らしい建物でヴォーリズのこだわりが感じられます。今も学生達が利用している図書館2階の閲覧室の高い天井に描かれた文様、美しい縦型アーチ型の窓、机に取り付けられたスタンドに、参加の卒業生3名も「懐かしい!」と興奮ぎみでした。総務館に隣接する講堂はアーチ型の天井が特徴的で、2階には大きなパイプオルガンが配されていました。
  二つの大学の建物は、神戸の震災で被害を受けましたが、設計者のこだわりと想いを受け継ぎ修復され、これからも愛され続けていくことでしょう…。
  美に対する知的な刺激を強く受け、充実した気分で帰途に着いた次第です。
文/新井律子


「ヴォーリズ建築を訪ねて」

  桜が咲き始める季節。幻想的な美しさを春に彩る桜は「夢見花」との異名を持つ。今回のセミナーでは、ヴォーリズが設計した神戸女学院の建築群と関西学院大学西宮上ヶ原キャンパスの建築群を探訪した。
  ヴォーリズはアメリカに生まれ、キリスト教の宣教を目的として来日。しばらくして建築の仕事を始め、近江兄弟社を設立。明治・大正・昭和の激動の時代を建築家・実業家として活躍した人物である。ヴォーリズが日本で見た夢とはどんなものだったのだろうか。
  神戸女学院大学のキャンパスは1933年(昭和3年)に岡田山に建てられた。建てられて80年以上経つが、人を魅了する建築美は失われることはなく、いつの時代もこのキャンパスに学ぶ学生の思い出をノスタルジックに彩ってきたことであろう。第一は正門である。石造りの正門のアーチをくぐればキュッと気持ちが引き締まる。この正門をくぐると、緩やかな坂道がしばらく続き、ごく自然に緑の中に学舎が佇んでいる。噴水を真ん中に配置した中庭を中心に4つの学舎が配置されている。4つの学舎それぞれに、美しいレリーフや装飾がほどこされており、窓や壁面、床いたるところにヴォーリズのこだわりがみられる。美しさだけではなく、掃除をしやすくするために、壁の隅はカーブがつけられており、機能性も追求されている。美の追求と、機能性の追求、細かな点までの心配りにヴォーリズの人柄を感じることができる。
  神戸女学院大学を出て、次なるヴォーリズ建築、関西学院大学上ヶ原キャンパスへと向かう。関西学院大学と聞けば、芝生と時計台がイメージとして浮かんでくる。キャンパス内に入ると、六甲山を背景にした、開けた景色に時計台と芝生の青が目に飛び込んでくる。芝生から時計台、その背景に広がる山々、景観の広がりがこれほどまでに心地よいものなのかということを認識させてくれる。
  上ヶ原キャンパスで特に印象に残ったのは、外国人宿舎であった。キャンパスに隣接しているが、静かな落ち着いた雰囲気で、石造りの赤い屋根で関西学院大学の建築群とテーマが統一されている。
  昭和初期、アメリカから日本に来ることは、相当の覚悟と気概が必要だったに違いない。外国人教師は、若者だったかもしれないし、シニア世代だったかもしれない。日本人の学生とともに日本の未来について議論したことだろう。時には共に六甲山を登ったり、須磨の海で泳いだりして余暇を楽しみ友好を深めたかもしれない。外国人宿舎の空気を感じることで、遠い国から日本にやってきた外国人教師の思いや暮らしに取り留めもなく思いがはせられる。
  今回のセミナーでは、ヴォーリズが残した古き良き建物から当時の息吹を感じることができた。祖国を離れ遠い日本で暮らした、彼らに敬意を表す。
三島郡島本町在住 山本雅也氏 37歳




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