ふだん着の家
所 在 地 / 高槻市
家族構成 / 夫婦+子供2人
構造・規模 / 2階建木造軸組工法
敷地面積 / 28.4坪
延床面積 / 28.9坪
先輩会員が語る暮らし心地



建築家からの一言

ご主人の転勤(単身赴任)をきっかけに茨木市の家を引き払い、奥さんの実家に隣接する土地を手に入れ、この家は建てられた。奥さんは病気がちの母親の面倒をみられることと、男親(夫)が週末にしかいない心細さの両方の問題を解決できた。この家を私は『ふだん着の家』と呼びたい。外観は2階から1.5m張り出したウッドデッキ以外何の変哲もない。家の中に4人の生活できる空間がとりあえず確保できている。子供達は学校、塾、遊びに忙しい。奥さんも子供達の世話、仕事、他色々と動き回っている。実家とこの敷地は2.5m程の段差があるが、木製の橋を掛けて2〜3歩で行けるようにした。
設計者の楽しい想像では2階の南に面したリビングに、土日に帰ってきた父親と一緒に床の杉板(厚さ3cm)の上で大きな建具(木製)を全開して4人がゴロゴロと猫のようにしている姿が浮かぶ。外部に対して「うちの家はこんなにすごいんだぞ。」と見栄を張る住宅を、この頃見かけることがあるが、この家の外観はあっさりとして目立たなく、中に入れば忙しい家族4人が猫になれるリビングをもった『ふだん着の家』である。


「わたしと家の履歴書」

  我が家は、4年前の2003年11月に完成しました。このあたりの日々を想いだすと、何ともいえず胸の奥で疼くものがあります。
  02年の秋頃、妻が「実家の母が病気で体調が良くないので、長女として手伝いたい。実家の近くに建売の土地が買えるので、家を建てない?」
  という、あっと驚く提案に若干の違和感はあったものの少しの議論と、総合的な判断により決断、初めて買って住んでいた中古住宅を売りに出し、1000万円以上の損をだしました。土地の値段は低下を辿っている頃で、ローンを完済する目的は達成できました。
  ところが、以前から囁かれていたように「家を買うと転勤」というジンクスに今回は、「ビンゴ!」。次の年の3月人事で名古屋への異動が決まり、長男の中学受験もあり、検討するもなにもなく単身赴任を選択。
  暮らし方研究会は発足当時から知っていましたし、中古住宅購入時の相談やリフォームでもお世話になったこともあり、研究会の建築家と家をつくることを以前から決めていました。木のぬくもりのあるシンプルな家を建てようと。
  後は、建築家の誰に依頼するのかということと妻の理解。その2つの命題は、新築の見学会に2人で出かけることで、難なくクリア。
  両側に家、後方には壁の三方が開けていない条件を考え、いくつかのプランの中から、二階にダイニングキッチン・リビングを配置する案に決定。
  予算はギリギリで限られているので、選択と集中しかなく、一階は諦め、二階に予算を集中投下することにしました。
  床は無塗装の杉板、壁はザラっとした質感のある塗壁、張り出したウッドデッキのベランダ、全面開放できるオリジナルの木製サッシ、天井には2つの天窓と大きな天井扇をお願いしました。エコキュートのオール電化に、リビングの床暖房。オーダーメード家具の食器棚も備えつけました。
  単身赴任中だったので、月に2回ほど帰った時に建築士と面談して打合せを実施、普段は妻が窓口になるも途中でギブアップを宣言。名古屋から電話・メール・ファックスを駆使して、何をいつまでに求めるかを一覧表にして、何が出来て、何が課題として残ったかなどを確認しながら進めました。
  建築士・工務店とのコミュニケーションギャップが生まれたのは、回答期限を決めずに、勝手に思い込んだ希望日までに返事がこないと憤る、細かい連絡の不徹底などの積み重ねがほとんどの理由。
  ビジネスでの経験があれば何でもないことですが、長期間にわたり細かく色んなレベルの話が同時進行となり、混乱をきたしてしまったんですな。
  よく言われることですが、建築士にとってはワンオブゼムの依頼主であっても、ひとりひとりの依頼主にとっては、お願いした建築士はオンリーワンの「私の建築士」ですから。コミュニケーションって本当に難しいものです。
  完成を間近に控えた03年11月頃から、体に異変を感じていました。
  その後、04年3月の緊急入院、退院は04年の9月。ここで、やっと命を賭けて作った私の新しい家に帰還することが出来たのでした。
  少しして、暮らし方研究会の安心パトロール、建築士、工務店の方々が訪れてくれ、色々と気になる箇所や点検をしてもらいました。これには、助かりました。心強いパートナーだと感じています。
  二階のリビングで子供2人が勉強し、妻は家事を、私は新聞を、この「みんなが集う」空間がとても気に入っています。苦労しただけの価値はあると思う し、何よりも住み始めて4年が過ぎ、体に馴染んできたと感じる今日この頃です。「いい家が出来た。なかなか、やるやん!」と自画自賛しています。
  本当に暮らし方研究会の方々には、お世話になりました。
  家づくり、単身赴任、発病から入院生活、休職期間の半年に及ぶ家事専任生活、営業から管理部門での復職と変化の大きなここ数年でした。
  病気は完治していませんが、以前より気力は充実し、考え方がより前向きになり怖いものが無くなりました。
  料理にも目覚め、土曜日曜の昼飯は必ず私がつくっています。そして、料理に合う器にも興味が沸いています。家事の大切さに気付き、それをやることは楽しくクリエイティブなことです。これからも大いに楽しむつもりです。

こちらにお住まいの「OB・OGの住み心地の声」はこちら