|
セミナー風景 |
|
高橋圭一氏による講義 |
|
旭堂南海先生の講談 |
|
上方講談・私設応援隊の石津良宗さん |
|
|
今回は上方講談・私設応援隊の講談セミナーに参加して、伝統芸能のひとつである「講談」を日本文学史のなかに学び、その話芸を堪能してきました。
セミナーは、大阪大谷大学文学部日本語日本文学科教授の高橋圭一氏による講義と旭堂南海先生による講談の実演との2部構成で行われました。
会場は、大阪天満橋のドーンセンターの会議室。参加者は総勢50名程、参加者の中には外国籍の方もいらっしゃいました。
1部は、大阪大谷大学 文学部 日本語日本文学科 教授 高橋圭一氏(主な研究課題は近世小説史、実録・講談史)による講義、実際の江戸時代の写本などを持ち込まれて予定時間を大幅に超過する熱弁で、この分野ではほぼ唯一の研究者だけあって会場からは驚きや感嘆、そして納得の声が聞こえていました。
昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」で人気を博した真田幸村の活躍を描いた「難波戦記」等を参照に江戸時代以降の講談の成り立ちなどで話が進みました。
江戸文学のひとつの分野、講談の種本の「実録」とは実際に起こった事件や人物を題材に実名で、それなりに筋を通した脚色を施した創作されたものがたりなのです。時の幕府からは実録の出版は禁止されていたので、木版刷りではなく手書きの本、写本で世間に広まったとのことです。
史実としては独立した大名でもなく大阪城では傭兵隊長のひとりに過ぎなかった真田幸村を英雄として創造し、庶民レベルにまで浸透させ、現在でも人気のある武将に仕立てたのは、江戸文学(実録)と講談、そして講談師のおかげであったと結論されていました。
2部は、旭堂南海(きょくどうなんかい)先生の講談を聞かせていただきました。
「難波戦記」の後日談として、豊臣秀頼と真田幸村は生き延び大阪城からトンネルで脱出し70名の家臣とともに船で薩摩へ向かい、薩摩の地で豊臣家再興の準備をするという語り。
「大阪城から脱出のために掘ったトンネルを利用したのが大阪市営地下鉄の谷町線なんです」など、過去に“いま”が絡んで笑いを誘います。鹿児島にある秀頼の墓や秀頼や幸村の祖先も出て来て、まさにフィクション、「講釈師見てきたような嘘をつき」とはよく言ったものです。南海先生の独特な声とリズミカルなしゃべり口調、身振り手振りでの臨場感たっぷりの迫力ある場面描写など、これが講談の醍醐味、まさに名人芸です。旭堂南海先生は、「太閤記」「関ヶ原軍記」「難波戦記」の軍談3部作の続き読み講談を音源収録(CD)することを、上方講談・私設応援隊とともに続けられています。
セミナー参加者は、講談を初めて聞く方がほとんどでしたが、上方の馴染みのある話でもあり何となく敷居の高かった講談を身近に感じられたのではないでしょうか。ひとり話芸の代表である落語とは違った講談の面白さを再確認したセミナーでした。
|
|
文/鈴木重三
|
|