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黒田観音寺 |
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黒田家始祖御廟所 |
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木ノ本地蔵院 |
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冨田酒造 |
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渡岸寺観音堂(向源寺) |
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中山道地蔵川 |
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米原市醒井(さめがい) の 水中花「梅花藻(ばいかも)」 |
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今回は、「仏教文化財の宝庫」や「観音の里」とも称される湖北路を巡ります。
井上靖氏が湖北を舞台にした『星と祭』は、“愛する人の弔い方”を描いています。湖岸の十一面観音をめぐるうちに心の平安を得ていく物語です。この作品は、絶版となっていましたが、湖北の住民たちによる復刊運動を経て出版されました。是非、観音像にお会いしたく、探求心旺盛に現地を歩いてきました。
まずは、木ノ本駅で自転車を借り「黒田観音寺」に向かいます。あらかじめお電話していた村の世話役さんが、かわいいお堂を開けて笑顔で迎えてくれました。伝千手観音立像と対面します。一木造りの千手像は平安時代初期の作で、18本の腕を持っています。気品に満ちた優しいお顔立ちです。
このあたりは観音菩薩像が濃密に分布し、集落の数に匹敵するほど多くの観音像が今なお村人たちによって大切に守られています。それぞれの村人たちが自分の村の仏様に誇りと親しみを持って守り継いできた信仰の歴史と、独自の精神文化や生活文化こそが、「観音の里」と称される所以なのです。
次に、戦国武将黒田官兵衛由来の、「黒田家始祖御廟所」に立ち寄り、北国街道の木之本宿へ。「木之本地蔵院」は眼病平癒の仏さまとして知られるお寺です。
さらに行くと冨田酒造があります。ここは賤ケ岳の七本槍に因んだ清酒「七本槍」の蔵元で450有余年の歴史を経た酒蔵です。北大路魯山人が当家に残した扁額「七本鎗」がお店にかかっていました。
それから、電車で高月に行き、駅前でお蕎麦をいただき、楽しみにしていた十一面観音立像に会いに「渡岸寺観音堂(向源寺)」に向かいます。この像は国宝に指定されている十一面観音像のなかでも、気品高く、妖艶で美しい像だと言われています。慈悲深い表情と、腰を少し左にひねった官能的なプロポーションは魅力的でした。近くの高月「観音の里」歴史民俗資料館でも、たくさんの観音様が展示されていました。この地域の宗教的文化的特質を、うかがい知ることができました。
最後に、米原市醒井(さめがい) の大変珍しい水中花「梅花藻(ばいかも)」を見学して帰路につきました。清流に咲く小さな白花は咲き始めでしたが清々しく、地蔵川沿いの中山道醒井宿の街並は、のどかで大変癒されました。
コロナ禍での少人数の旅。初夏の陽を浴び、いぶし銀のような渋い街を巡り、久々に気持ちの良い充実した一日を過ごしました。お疲れさまでした。
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文/新井律子
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