日   時 2021.5.29(土) 10:00〜16:00頃まで
場   所 滋賀県、木ノ本~高月~醒ヶ井まで
参 加 人 数 6名
テ ー マ 『初夏の湖北路をゆく...』



黒田観音寺
黒田家始祖御廟所
木ノ本地蔵院
冨田酒造
渡岸寺観音堂(向源寺)
中山道地蔵川
米原市醒井(さめがい) の
水中花「梅花藻(ばいかも)」
 今回は、「仏教文化財の宝庫」や「観音の里」とも称される湖北路を巡ります。
 井上靖氏が湖北を舞台にした『星と祭』は、“愛する人の弔い方”を描いています。湖岸の十一面観音をめぐるうちに心の平安を得ていく物語です。この作品は、絶版となっていましたが、湖北の住民たちによる復刊運動を経て出版されました。是非、観音像にお会いしたく、探求心旺盛に現地を歩いてきました。
 まずは、木ノ本駅で自転車を借り「黒田観音寺」に向かいます。あらかじめお電話していた村の世話役さんが、かわいいお堂を開けて笑顔で迎えてくれました。伝千手観音立像と対面します。一木造りの千手像は平安時代初期の作で、18本の腕を持っています。気品に満ちた優しいお顔立ちです。
このあたりは観音菩薩像が濃密に分布し、集落の数に匹敵するほど多くの観音像が今なお村人たちによって大切に守られています。それぞれの村人たちが自分の村の仏様に誇りと親しみを持って守り継いできた信仰の歴史と、独自の精神文化や生活文化こそが、「観音の里」と称される所以なのです。
 次に、戦国武将黒田官兵衛由来の、「黒田家始祖御廟所」に立ち寄り、北国街道の木之本宿へ。「木之本地蔵院」は眼病平癒の仏さまとして知られるお寺です。
 さらに行くと冨田酒造があります。ここは賤ケ岳の七本槍に因んだ清酒「七本槍」の蔵元で450有余年の歴史を経た酒蔵です。北大路魯山人が当家に残した扁額「七本鎗」がお店にかかっていました。
 それから、電車で高月に行き、駅前でお蕎麦をいただき、楽しみにしていた十一面観音立像に会いに「渡岸寺観音堂(向源寺)」に向かいます。この像は国宝に指定されている十一面観音像のなかでも、気品高く、妖艶で美しい像だと言われています。慈悲深い表情と、腰を少し左にひねった官能的なプロポーションは魅力的でした。近くの高月「観音の里」歴史民俗資料館でも、たくさんの観音様が展示されていました。この地域の宗教的文化的特質を、うかがい知ることができました。
 最後に、米原市醒井(さめがい) の大変珍しい水中花「梅花藻(ばいかも)」を見学して帰路につきました。清流に咲く小さな白花は咲き始めでしたが清々しく、地蔵川沿いの中山道醒井宿の街並は、のどかで大変癒されました。
 コロナ禍での少人数の旅。初夏の陽を浴び、いぶし銀のような渋い街を巡り、久々に気持ちの良い充実した一日を過ごしました。お疲れさまでした。
文/新井律子



観音の里 湖北路を巡って


 今回の湖北を巡るセミナーの内容を聞き、思いだしたのは長浜市高月町に住む大学の先輩が「観音さん」の世話方を始めたという話です。世話方のお年寄り達との飲み会を兼ねた寄合や訪ねて来られる方々の応対などお面白い活動の話を聞いていました。そして、参考書籍として井上靖の「星と祭り」を読み終えてセミナーに参加することにしました。

 緊急事態宣言の延長が決まったセミナー開催日、大阪から京都を超え、北陸本線の木ノ本駅まで行きます。梅雨の雨に降られる心配はなく、そこには風薫る山並みの緑が眩しい田園風景が広がります。レンタルサイクルに乗って、柔らかな風を頬に受け、たまに吹く湖からの突風に押されて向かいます。
 「渡岸寺観音堂(向源寺)」へ、立派な山門をくぐり抜け、大きな赤い提灯が目を引く本堂の左には、井上靖の文学碑「慈眼 秋風 湖北の寺」があります。収蔵庫に所蔵されているのは、国宝の十一面観音立像、腰を少し左にひねった官能的なプロポーション、大きく作られた頭上の十一面とその配置、「じとう」と呼ばれるイヤリングなど数々の特徴を備えています。いずれも世話方さんによる案内で、訥々としたテープによる解説は味があります。

 戦国時代の動乱期に焼き討ちや火災にあったときは、村人たちが観音像を川底に沈めたり、地中に埋めたりして難を逃れて守ってきたと伝えられています。あぜ道を村人が走りながら大声で皆に危険を知らせる姿が目に浮かびます。
 この時代から現在に至るまで受け継がれている観音信仰、仏教の宗派や教義を超え限りない誇りと親しみを持って手厚く「うちの観音さん」を守っています。
 黒く焼け焦げたり、傷めつけられて、中には体の一部分となった仏像を、高月観音の里「歴史民俗資料館」で見たときには胸が熱くなりました。次世代へ脈々と引き継がれてきたこの地の当たり前、「うちの観音さん」という残すべき素晴らしい文化だと感じました。
高槻市在住 鈴木重三氏 60歳代


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