所 在 地 / 大阪市城東区
家族構成 / 夫婦+姉(たばこ店)
工事内容 / 2階建木造軸組工法(築27年)
の全面改修工事
延床面積 / 33.3坪


建築家からの一言

木造2階建の全面改修工事で、1階でお姉さんがタバコ店を営み、ご夫妻が1〜2階に住まわれるための工事となりました。
施主のご要望は、初期の頃からの雨漏りを、屋根を改修して直し、耐震のため構造材を補強し、壁・窓の断熱性能を高め、これからの暮らしを快適にすごすことでした。 
もともと二世帯住宅として外部にあった2階への階段を撤去し、内部に、2階へゆっくり上がり降りができる階段をとり、駐車スペースの上部には、居間とつながるデッキをもうけ、里山の雑木林をイメージして植木を選び、ほっこりと落ち着ける、ちょっと贅沢な空間にしました。
建物だけでなく、お二人にも10才程若返っていただこうと、内装にも工夫しました。
居間からの「里山」を眺めながら、都市に居ることを忘れ、一日の時間がゆっくりと過ぎていくような暮らし方をしてほしいと思います。


施主から一言

築27年を経て、車の往来の激しい国道沿いの我が家も車の振動と排ガス公害を受けてボロボロ。
建て直しか!リフォームか!さんざん迷った挙句、住宅関係専門誌「ナイスリフォーム」で「暮らし方研究会」を知り相談した結果、リフォーム可能。との診断を得てこの度の改装となりました。
設計段階から工事完成まで、施主(素人の私達のこと)の勝手気ままな意見をソフトに受けて専門的に処理して頂き、何とこれがリフォームなの?と、驚くばかりの変身振りに私たちは毎日快適に過ごしています。


■リフォームまでの経緯
 私達の住まいは、結婚して間もない頃(S49年)に古くからこの地でタバコ店を営む義姉と、二所帯住宅に建替えたのですが、運悪く建築中に第一次オイルショックに突入し、建築資材の不足・高騰で工期は延び、内装材に至っては最低の材料を使って何とか完成しました。
(柱などの構造部材はオイルショック前に仕入れていたので難を逃れた)ところが新築当初から屋根の構造欠陥による雨漏りがひどく、工務店に再三クレームを付けたが喧嘩別れ?となり、自分で屋根に登り修理する始末となって、だましだまし(塗装をしたりパテを塗ったり)凌いできたのですが、所詮素人の事、完治する訳もなく28年間を過ごしてきました。子供たちが独り立ちしてしまった今、私達家族の永い生活を支えてくれて、くたびれ果てた住まいの事が、すごく気になり始めたのが(改築も視野に入れて)リフォームを考えるキッカケだったのです。

■暮らし方研究会との出会い
 最近の住宅情報や建築情報は新聞や住宅専門誌またはインターネットと情報源には事欠かないが、どの工務店、または設計事務所が良いのかまったく判断がつかないのが素人の辛いところ。何件かの工務店に相談してみたものゝ私達の思惑とはピッタリせずに困っていました。本屋で見つけた建築情報誌「ナイスリフォーム」に暮らし方研究会の施工事例の記事を読んで、私達の思惑に会っているような気がして、暮らし方研究会に相談したのが同会との始めての出会いでした。
 建物診断では、古くなった我が家は年齢で言うと私と同等とのこと?(つまりガタガタと言う事か!?)とにかくリフォームが可能か否か、専門の先生方が詳しく調査して(屋根の雨漏りによる腐敗の進行度・シロアリ調査・等)リフォーム可能と診断された事でリフォームの方向で検討して行くことにしました。
そうする事が私達の古い物を壊していく消費美徳風潮へのアンチテーゼのつもりで・・・・・・
初期段階では私達の住む2階部分を全面改装といった相談で進めたのですが、義姉がこれを機に、かねてからの夢だったマンション暮らしを実現して引っ越すことになり、急遽、二所帯住宅を1軒の住宅として改装することに変更、耐震構造を含めた全面改装となりました。このようにのっけから行き当たりばったりの状態で、対応に当たってくれた建築家は、私達のような複雑な家庭事情も根気良く、柔軟に対応してくれました。
こうして私達夫婦と愛犬一匹の住む家としてリフォーム計画はスタートしたのです。

■設計段階
この家で永年住んだ経験から依頼した内容と( )内は結果の略述。
1. 屋根の改修 (絶対に雨漏りのしない屋根に改修)
2. 壁の断熱性が悪いので防音効果と兼ねた改善を望む。
(断熱効果の高い材質を使う)
3. 国道沿いであるため振動が激しいので耐震強度を上げる。
(構造用合板で面強度UP)
4. 老後の事を考え、2階への階段は緩やかにすること。
(外階段を内階段に変更)
5. 愛犬Golden Retriever(パッキー七歳)の住むコーナーを作る。 
(急死のため断念)
6. ガレージの隅に1本の木(ヤマボウシ)を植えたい。
(地植えは断念し、ガレージ上に植栽)
 設計をスタートさせて間もなく、私達のパートナードッグ(パッキー)が肝臓ガンで急死・・・・・・しばらく何もする気がしなくなり、空白の時間が必要でした。また、私達の具体的な改装プランがしっかりしていなかった事もあって、新築とは違い、リフォームには制約条件が付きまとい、なかなか思うような設計にならず、初心とは違い、私達の気持ちの中では建替えか?リフォームか?揺れ動いたものでしたが、何度も何度も基本設計を直して根気よく対応して頂いたのには本当に頭の下がる思いがしています。

■工事のスタート
 工務店が決まり、5月初旬いよいよ工事が始まり足場が組まれたシートの中で部分解体が始まり哀れな姿になっていく我が家の状況を見て「こんなに壊して大丈夫かいな?」と、不安と期待で傍観するのみでしたが、日が経つにつれ新しく変身していく我が家に向かって思わず「頑張れよ」と声を掛ける始末。(少しオーバーですが!まるで手術を受けているわが子を見守る心境でした・・・・・・)
工事が佳境に入ったのは初夏に入ってからですが、この年の夏は特別に暑く、工事関係者の方々には大変苦労された事と思います。(ご苦労様でした)

■建築家にたのむということ(私の独り言)
 一般的に家を建てる場合、大手の企画住宅・町の工務店・知り合いの大工さん等ゝ様々な方法が考えられるが、住み手の「ライフスタイル」を限られた資源の中で希望を最大限に具体化したい場合には規格住宅では難しい! 住まいは物理的利便性だけに留まらずに生き方そのものを包み、育む空間であり、それを実現してくれるのが建築家の仕事であると考えるが、依頼者の住まいに対する考え方が明確になっていなければ如何に優秀な建築家と云えども対応は難しい。その点で、恥ずかしながら今回の私達の事例が建築家泣かせの事例ではなかろうか!(大いに反省しているところです)また、我々庶民が建築家に設計を依頼すると言うことは、かなり敷居が高いように感じられるが、暮らし方研究会ではそのような壁?を無くし、会の趣旨にあるように、住み手の暮らし方を真剣に考え、応援してくれる素晴らしい研究会となっている。同会を通じて大いに建築家の知恵を借りることをお勧めしたい。

■リフォームが完成して
 かくしてリフォームは完成した。ウッドデッキに設けた小さな植栽部分は里山をイメージして、シンボルツリーはヤマボウシ、脇には夏にピンクの花をつける百日紅、そして枯れ木ばかりの冬に可憐な花をつけてくれるツバキ(胡蝶ワビスケ)裾には春に白い花をつける雪柳、黄色の山吹、その他、四季を通じて花をつけてくれる小さな植物たちを植えた。
その木々が今は新緑の真っ盛りである、子供の頃、疎開地(福岡県)の里山で遊んだ記憶が甦ってくる。と言ったら少しオーバーだろうか!
今、ここに私達夫婦と老後を共に過ごす予定であった愛犬パッキーが居ないことが非常に残念ではあるが、今後はその寂しさをこの植栽の木々たちが癒してくれるだろう・・・・・・
住環境としては決して良いとは言えない都会の喧騒の中で緑とは無縁の生活をしてきたので、ささやかながら身近に四季を感じられる生活が出来る思いも寄らない幸せに、これからの生活が楽しみです。(この家に相応しく私達も若返るべく努力したい)こんな住まいにリフォームして頂いて、「暮らし方研究会」に相談して良かったと感謝しております。
2002年5月吉日