建築家からの一言
敷地は間口約9m、奥行き約20mの東西に長い形状をしており、境界から1.5mの壁面後退が義務付けられている。敷地の西側部
分は法面になっており、一方敷地東側に駐車場スペースを確保すると、自ずと建物配置が決まってくる。
その条件の中で、床面積を有効に使いながら、採光と風通しが十分に確保できるプランを心掛けた。玄関を建物北側中央に設け、
廊下的な部分を少なくしつつ、スロープで建物にアプローチできるようにした。玄関は壁面後退規制の緩和規定を利用し、下屋と
して飛び出た形にすることにより、それ以外の住まいの主要空間にまとまりを持たせた。また仕切りを引戸とすることにより、
開放すると寝室からホール、階段、居間、食堂、台所そしてテラスへと空間がひと続きになるように計画した。階段を建物中央に
設け、2階からの光が1階まで届くようにし、風が1階から2階へ抜けるようにした。またこの敷地は高台にあるため、2階テラスから
は周囲の眺望と夏の花火が楽しめるように考えた。さらに家事動線ができるだけ短くなるように、台所と浴室、洗面・洗濯場、物
干場を近接して設けた。室内は床にナラの無垢材、壁・天井に紙貼り、階段・建具・本棚なども木製とし、現しの木造梁とともに
内装を木と紙でまとめることにより、シンプルで身体にも見た目にもやわらかく、やさしい空間になるように配慮した。
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