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照明と"あかり" |
辻 利門 生活文化を学ぶ会会員・(社)照明学会 照明士 |
照明の器具及びライティング技術は、ここ十数年の間に、建築に対しての光として大きな進歩を遂げました。公共建築、学校、病院、ITオフィス、美術館、商業店舗、において質の高い照明環境を創ることは、重要なポイントになり、ライティング・デザイン事務所が多数設立されました。又、神戸ルミナリエや京都寺院ライトアップ・ユニバーサルスタジオのアミューズメントの光など、屋外での光を楽しむことが、盛んになりました。私も、関西照明学会の活動の中で、いろいろな現場の審査員として、また現場視察の同行説明に従事しましたが、高度なライティング技術により、照明は空間の快適性と建築ディテールへの効果的役割を大きく担っております。 特に、信楽 MIHOミュージアム・奈良 国会図書館・中ノ島中央公民館など、建築と照明がマッチしたすばらしい空間が創られております。 |
ところで、住宅の照明について、かつてデンマークから来日されたデザイナーが、なぜ、日本の住宅には"あかり"に、〔作業のあかり〕を使用するのですか?と質問されたことがあります。私は、とっさに、答えが出てきませんでした。集合住宅〔マンション〕からは、彼が言う蛍光灯サークラインの白い光が白々と光っていました。 |
さて、蛍光灯がなぜ、住宅にこれほどに浸透したのか。 1、明るさ (白熱灯の3倍の明るさ) 2、省エネ (電気料金の節約) 3、白い涼しい光(発熱が少ない) このような理由から日本において、戦後の電力事情もあいもって、爆発的に普及しました。 今、暮らしの快適性の向上、又セキュリティーの確保など、家電製品の充実と機能アップが実現しております。しかし、暮らしの中での"あかり"の活用と果たすべき役割について、いま考える時だと思います。 私たち日本人は、古来、祭りの火としての"あかり" 和蝋燭の"あかり" ちょうちんの"あかり"など、"あかり"とうまく向き合い、生活の中にとりいれてきました。自然のひかり〔太陽光・月明り〕とも、障子による拡散光 苔・玉砂利の反射光などによる活用に秀でた使い方をしてきました。 暮らしの中での"あかり"とは、心を落ち着かせ、気持ちを温めてくれる‘なごみ’の光であり、悦びを湧き起こさせる‘ときめき’の光です。 〔ここに1つ提案します〕 天井の照明を消して低い位置の"あかり"の空間に自分を置いて見てください。 食後・入浴後などに、テーブルスタンド・観葉植物の後ろの陰影・テーブルのローソクの"あかり"の中に自分を置いて見てください。今までとは違った空間が生まれてきます。 |
部屋の中心に一室一灯ある照明・全体を均一に照らす照明とは違った"あかり" によって、いろいろなものが、違った表情を見せることでしょう。 ひと時、自分を取り戻し心に潤いを浸すことに"あかり"の役割があります。自分にとって、最も素適な"あかり"の空間を創り、より快適な暮らし方を考えてみてはいかがでしょうか。 |
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